「超アナログな業界」というイメージが根強く残る不動産業界。不動産管理会社である当社も、かつては日常的にFAXや郵便を多用し、属人的な業務を行っていました。こうした状況に疑問を抱き、率先して業務改善に取り組んだのが、現在営業部で部長を務める上野謙です。
上野が賃貸仲介部門を統括し始めてから6年。 “超アナログ”だった当社の業務は、平準化と適宜デジタルツールを導入しながら効率化を実現。結果としてDXにつながりました。
牽引役となった上野が、業務改善するに至った経緯や社内浸透のプロセスなどについてお話するこの連載。今回は改善する糸口をどのように探し、導入、定着させていったのか、そのプロセスをご紹介します。
プロフィール:上野 謙(うえの・けん)
2008年エヌアセット入社。2019年より営業部部長に就任。
賃貸仲介、売買仲介、保険、管理受託など幅広い領域の営業活動を経験。2016年賃貸仲介部門責任者着任時より賃貸仲介の接客品質向上と集客増加をはかる。現在、人とサービスで選ばれる組織作りを目指し、業務改善と組織DX化に取り組む。
他社事例から学ぶことが、改善への近道
エヌアセットとして大きな転機になったのは、2016年に実施した店舗リニューアルです。他社を見て刺激を受けた若手社員たちが「従来の店舗とは違い、お客様がリラックスできる空間を」と声をあげたことが、きっかけとなりました。
一方で店舗改装後、一時集客数は低下する事態に。不動産会社らしからぬおしゃれなカフェ風な店舗内装への変更により、今まであった多くの飛び込み顧客の流入がなくなり、賃貸集客・売上げともに苦戦の時期が続いたのです。
そんな中、激戦区・溝の口において“選ばれる不動産店”になるにはどうしたらいいのか──2016年、自ら手を挙げ賃貸仲介部門のリーダーとなった私は、まず他社の研究から始めることにしました。優良企業の事例が、改善への一番のヒントになると考えたからです。
営業メンバーで溝の口だけでなく八王子の仲介・管理会社にヒアリングしたり、社員旅行や出張の際に、福岡や高知の店舗を視察したり……各社のご協力のもと、店舗デザインや接客のノウハウ、チームのマネジメント法など貴重なナレッジを分けていただくことができました。
▲2016年にリニューアルした南口の店舗写真
新システムを浸透させるカギは「メンバーの成功体験」
2017年には営業部として実質的な「仕事の仕方」も変えようと、CRM(顧客管理システム)を導入。これも他社事例を参考にした取り組みでした。
通常、新たなシステムの導入は、特に操作方法の取得が負担に感じられ、現場メンバーにはあまり歓迎されません。CRMも同様で、はじめは理解を促すのにも一苦労。しかし、しばらくすると、多くのメンバーが積極的に活用するようになりました。「追客業務の自動化で抜けもれがなくなった」「反響に即反応できるようになり、結果として来客数が増えた」など導入効果がすぐに見えたことで「これは活用したほうがいい」と早期に気づいてくれたようです。
その後も電子申込システムやVRなど新システムを導入する度に社内から反発は出ましたが、私自身は何を言われてもどっしり構えられるようになりました。CRM導入時の経験から「心を鬼にしてでも良いシステムは導入するべき」だと確信できたからだと思います。
こうして一つひとつ積み上げてきた営業部の取り組みは、じわじわと各部署に広がり「企業としてのDX化」に。売上のみならず、全社の効率化という思わぬ副産物を生み出しました。
次回の(3)は、入社1年目社員が推進!非対面・非接触のサービス「リモートレント」の誕生秘話についてお話します。