「超アナログな業界」というイメージが根強く残る不動産業界。不動産管理会社である当社も、かつては日常的にFAXや郵便を多用し、属人的な業務を行っていました。こうした状況に疑問を抱き、率先して業務改善に取り組んだのが、現在営業部で部長を務める上野謙です。
上野が賃貸仲介部門を統括し始めてから6年。 “超アナログ”だった当社の業務は、平準化と適宜デジタルツールを導入しながら効率化を実現。結果としてDXにつながりました。
牽引役となった上野が、業務改善するに至った経緯や社内浸透のプロセスなどについてお話するこの連載。今回は当社のDX化を大きく前進させた「リモートレント」誕生秘話についてご紹介します。
プロフィール:上野 謙(うえの・けん)
2008年エヌアセット入社。2019年より営業部部長に就任。
賃貸仲介、売買仲介、保険、管理受託など幅広い領域の営業活動を経験。2016年賃貸仲介部門責任者着任時より賃貸仲介の接客品質向上と集客増加をはかる。現在、人とサービスで選ばれる組織作りを目指し、業務改善と組織DX化に取り組む。
“言い出しっぺ”入社1年目社員をVRプロジェクトのリーダーに
2019年10月。当時入社1年目だった佐藤頼人から「例のVRプロジェクト、どうなりましたか?」と問われました。
賃貸仲介を進めるにあたっては、お部屋の内見が不可欠。しかし入居中やお客様のご都合などで、すぐにお部屋を見ていただけないケースもあります。お客様のタイミングを逃さないためにも、物件のVR画像を活用した「オンライン内覧システム」を導入したい……そう思いつつも、私は多忙を理由になかなか手がつけられずにいたのです。しかしカウンターで接客にあたっていた佐藤は、誰よりもVR画像の必要性を感じていました。
社歴に関係なく「言い出しっぺがやり切る」のが当社のカルチャー(笑)。私は改めて佐藤をプロジェクトリーダーに任命しました。
VR画像をある程度撮りためなければ、新サービスとしてリリースはできません。佐藤をはじめとする若手メンバーたちは、接客の合間を縫って自社管理物件を撮影。「カギを忘れた」「まだ清掃されていない物件だった」など、小さなアクシデントに見舞われながらも、めげずに画像を撮りためていきました。また、実務と並行して佐藤は、状況を逐一全社に発信し、プロジェクトへの理解促進に努めました。
▲物件のVR画像を活用したオンライン内覧システム「リモートレント」
多くのお客様に喜ばれた、非対面・非接触のサービス「リモートレント」
年が明けて2020年。新型コロナウイルスの感染拡大により、期せずして対面接客を極力回避しなければならない事態に。オンライン内覧システムの必要性も日に日に高まっていきました。佐藤たちは、さらにスピードアップして物件を撮影して周りました。
そして、VR撮影物件数が500に達した4月。お部屋探しに必要な「ヒアリング・物件の内覧・申込・契約前の重要事項説明・契約」の5ステップがすべてオンラインで完結できる当社のオリジナルサービス「リモートレント」がいよいよ提供開始に。メディアでは“コロナ禍のニーズをいち早く反映したサービス”として大々的に取り上げられ、実際に利用されたお客様からも喜びの声が。わざわざ店舗に足を運ぶことなく遠方からお部屋探しができるリモートレントは、コロナ禍で引越しするお客様にとって頼みの綱となりえたようです。
結果として新人・佐藤の「お客様への想い」が、画期的なサービスを生み出し、当社をさらなるDX化へと導きました。
次回の(4)は、「リモートレント」がきっかけとなり実現した業務効率化と社内体制の整備についてお話します。