「超アナログな業界」というイメージが根強く残る不動産業界。不動産管理会社である当社も、かつては日常的にFAXや郵便を多用し、属人的な業務を行っていました。こうした状況に疑問を抱き、率先して業務改善に取り組んだのが、現在営業部で部長を務める上野謙です。
上野が賃貸仲介部門を統括し始めてから6年。 “超アナログ”だった当社の業務は、平準化と適宜デジタルツールを導入しながら効率化を実現。結果としてDXにつながりました。
牽引役となった上野が、業務改善するに至った経緯や社内浸透のプロセスなどについてお話するこの連載。今回は「リモートレント」がきっかけとなり実現した業務効率化と社内体制の整備についてご紹介します。
プロフィール:上野 謙(うえの・けん)
2008年エヌアセット入社。2019年より営業部部長に就任。
賃貸仲介、売買仲介、保険、管理受託など幅広い領域の営業活動を経験。2016年賃貸仲介部門責任者着任時より賃貸仲介の接客品質向上と集客増加をはかる。現在、人とサービスで選ばれる組織作りを目指し、業務改善と組織DX化に取り組む。
「リモートレント」で省力化できたワケ
前回お話しした「リモートレント」は、お部屋探しに必要な「ヒアリング・物件の内覧・申込・契約前の重要事項説明・契約」の5ステップのうち、必要な部分のみをオンラインで実施できる柔軟さを持っています。2022年2月現在、撮影済みのVR画像は1000件以上。リモートレント開始後は、該当する物件についてお問い合わせいただいたお客様に対して、即メールでVR画像をお送りするように。一度も現地に足を運ばずに契約されるお客様も徐々に増えました。
中には「オンライン上のみのやりとりで、入居後のクレームは発生しないの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、今のところクレームはほぼゼロ。VR画像では内観だけでなく、外観やゴミ捨て場などの共同スペースまでご覧いただけるほか、口頭でも物件の長所だけでなく短所もきっちりお伝えしていることが功を奏しているようです。
このサービスをリリースした2020年には、電子申込システムも導入しましたが、こちらも想定以上の省力化に。紙による申込に比べて「お客様情報を入力する手間がなくなった」「FAX送付からデジタル送信となり、審査会社による入居審査期間が最短5分と大幅に短縮された」など、多くのメリットにつながりました。
▲物件のVR画像を活用したオンライン内覧システム「リモートレント」の利用の様子
分業化を進め、さらなる効率化を目指す
その後、電子申込システムや不動産管理システムなど複数のアプリケーションと、基幹システムを紐づけることにより、業務効率化はさらに進みました。当社は不動産管理会社ながら仲介部門も持ち合わせているため、物件情報と入居者情報の連携が可能なのです。そうすることで、オーナー、入居者双方に向けた迅速かつ適切なサービスを提供できるようになりました。
加えて、2021年から着手しているのが、全社を巻き込んだ業務分担体制の確立です。それまで賃貸仲介チームは、メンバー一人ひとりが接客、現地への案内、書類作成などすべての業務を同時進行で行っており、非効率さが課題となっていました。新体制では、接客業務と事務作業のチームを分け、分業を行うことで作業効率の向上を目指しています。
デジタルツールを導入するだけではなく、リアルの業務も一つずつ見直すことで営業部の業務効率化はさらに前進しました。
次回の(5)は、業務効率化の先にある「選ばれる会社」「人にしかできないこと」についてお話します。